
Stone IslandとPaul Hearvey
- Keiya Otsuka

- 1月28日
- 読了時間: 4分
更新日:2月3日
Stone Islandの歴史の中でも、90年代はひとつの完成期であり、最も挑戦的な時代でした。
この時代のStone Islandは、単なるカジュアルウェアブランドではなく、素材研究機関に最も近い服作りを本気で量産レベルまで持ち込んでいた、稀有な存在でした。
この90年代Stone Islandを語るうえで欠かせない人物が、ポール・ハーヴェイ(Paul Harvey)です。

創設者マッシモ・オスティの後、1995年から2008年までstone island のデザイナーを務める
ポール・ハーヴェイとマッシモ・オスティ
ポール・ハーヴェイは、マッシモ・オスティの右腕としてStone IslandおよびCP Companyのデザインと開発を支え、「服のデザイン」ではなく「服の構造と素材の設計」を担っていた人物です。
彼の最大の特徴は、
ミリタリー・ワークウェアの構造解析
ヴィンテージウェアの分解と再構築
工業素材・特殊素材の衣服転用
染色や加工工程を前提にした設計
といった、完全にエンジニア寄りの発想で服を作っていた点にあります。
90年代のStone Islandが放っていた異様なまでの「実験臭さ」は、このポール・ハーヴェイの設計思想が、色濃く反映された結果でもあります。
ハーヴェイ期の特徴は、
•シルエットが洗練されている
•着心地やバランスが良い
•機能性とファッション性のバランス
•テック感はありつつも、日常に馴染むデザイン
この時代のStone Islandは実験的な要素に合わせて、街でのライフスタイルにフィットする、「ファッションアイテム」という方向に進化していきます。
「素材実験」が最も過激だった時代
この時代のStone Islandは、今振り返っても異常な素材開発を連発しています。
Ice Jacket(温度で色が変わる感温素材)
Metal Shell(金属繊維を織り込んだナイロン)
Liquid Reflective(ガラス粒子による強反射素材)
Rubberised Linen / Raso Gommato(ゴム引き生地)
Kevlarブレンド素材

すべて実際に販売され、普通に着用されることを前提に作られていた服です。
特に90年代は、「ここまでやる必要があるのか」と思えるほど素材をそのまま製品化していた時代だと言えるでしょう。
“ガーメントダイありき”の服作り
この時代のStone Islandの多くは、全ての縫製を終えた後に染色を行う、「ガーメントダイ」されることを前提に設計されています。これは通常の衣服とは真逆の作り方です。
縫製後にどう縮むか
素材ごとにどう色が割れるか
どこにパッカリングが出るか
これらをあらかじめ織り込んだパターン設計がなされており、ポール・ハーヴェイの「経年によって完成する洋服」という思想が、はっきりと見て取れます。
結果として生まれる、
強烈な色ムラ
パーツごとのトーン差
立体的なシワの入り方
これらはすべて意図された「不均一性」です。


“今見ても未来の服”に見える
不思議なことに、Stone Islandのアーカイブは、今のテックウェア文脈で見ても、まったく古さを感じさせません。
それどころか、「多くの現代ブランドが、Stone Islandにようやく追いついてきた」と言っても、決して言い過ぎではないように思われます。
これは当時のStone Islandが、ファッションではなく、純粋に「衣服の技術」を更新し続けていたことの証明でもあります。

古着になって初めて“完成する”Stone Island
Stone Islandは、新品状態よりも、時間が経過した個体のほうが、圧倒的に表情が豊かです。
コーティングのクラック
ナイロンのフェード
ガーメントダイ特有の退色
縫製部のアタリや立体感
これらは劣化ではなく、
「使用によって初めて表に出てくるデザイン」だと言えるでしょう。
特にこの時代のアイテムは、経年変化によって情報量が増えていく服として設計されています。


“量産された研究成果”
90年代のStone Island、そしてポール・ハーヴェイの仕事は、ファッション史の中でもかなり特異な位置にあります。
それは「服をデザインする」のではなく、
「衣服という形で研究成果を流通させていた」時代でした。
もしStone Islandのアーカイブを手に取る機会があれば、ぜひ「服」ではなく、ひとつの実験プロダクトとして見てみてください。
きっと、その異常な作り込みに驚かれるはずです。


